「ヒアルロン酸注入で“血流障害”は本当に起こるのか?失敗を防ぐために知っておきたい4つの真実」

美容医療として広く認知され、安全かつ手軽な施術と思われがちな ヒアルロン酸 注入。しかし、その“リスクがゼロではない”という現実を知っておくことは、「ナチュラルかつ安全な仕上がり」を目指す私たちにとって不可欠です。特に注意すべきは、まれながらも起こりうる 血流障害(血管塞栓)
今回は、そのメカニズム、サイン、そして“もしもの時”の対応 — さらに“失敗しないための安全意識”について、ヒアルロン酸専門医師の立場から詳しく解説します。

血流障害とは?なぜ起こるのか

ヒアルロン酸治療で最も恐れられる合併症の一つが、血管の中にヒアルロン酸が入り込んでしまったり、注入部近傍の血管を圧迫したりすることで 血流が遮断される状態 です。

具体的には、以下のようなパターンがあります

直接の血管内注入:針先が動脈の壁を貫通し、誤ってヒアルロン酸が血管内に注入されるリスク。これにより、その先の組織への血流が即座に遮断される可能性があります。

圧による逆流/塞栓:高圧で注入されたヒアルロン酸が血流に逆らって流れ、重要な動脈(例えば眼動脈など)に入り込むことも。これが原因で、注入部から離れた部位にまで深刻な合併症が起きる場合があります。

周囲からの圧迫:直接血管内注入でなくても、注入されたヒアルロン酸が血管近傍で腫れて血管を外側から圧迫し、血流が悪化するケース。ヒアルロン酸は水分を吸いやすいため、時間の経過とともに圧迫が強くなることも。

つまり、単なる“注入ミス”ではなく、「なぜ」「どのように」血流障害が起こるか、そのメカニズムを理解することが、安全なヒアルロン酸治療において最初のステップです。

血流障害が引き起こすこと 最悪のケースとは

血流が遮断されると、その先にある皮膚や組織に酸素・栄養が届かず、やがて 壊死 に至る可能性があります。

典型的な経過としては

初期:注入直後から数分 — 皮膚が白くなる、冷感・しびれ、強い痛みなど。

数分〜数時間 → 数時間:網目状の赤い斑点、皮膚の青紫・紫変、痛みの増強。

数時間〜24時間:水疱、暗紫色〜黒色への変化、感覚の鈍麻または消失 — 壊死の兆候。

24時間〜72時間:明らかな壊死、潰瘍化、感染、瘢痕化へ。

さらに恐ろしいのは、注入部とは離れた部分にも被害が及ぶ可能性があること。例えば、鼻やほうれい線など目や脳へ近い部位への誤注入・逆流が起きた場合、 失明脳梗塞 といった重篤な事態にもなり得ます。

このように、血流障害は「肌の仕上がりが不自然になる」「一時的に腫れる」といった軽い懸念ではなく、時に 生命・機能に関わる 危険な合併症であることを、私たちは常に忘れてはなりません。

起こる頻度と“だからこそ知っておくべき”理由

一般的に、ヒアルロン酸による血管塞栓の発生頻度は「非常にまれ」とされ、ある報告では“10万人に 1人(0.001%)”とも言われています。

しかし、この数字はあくまで“報告された症例”に限ったものであり、私自身の臨床経験および周囲の医師からの情報を総合すると、「実際にはもう少し高頻度で起きているのでは?」という感覚を抱いています。特に、経験の浅い医師や解剖学の理解が浅いまま注入を行うケースでは、注意が必要です。

また、医師の経験や技術があっても “絶対に安全” とは言えません。むしろ、 安全意識と “万が一の対応準備” があるかどうか が重要。なぜなら、血流障害は 秒〜数分で始まり、数時間以内に不可逆的な壊死につながる ことがあるからです。

そのため、たとえまれであっても、 患者さんにも医師にも「起こり得る合併症」 として、正しい知識と準備が必要 — これは、私自身が “ナチュラルで美しい仕上がり” を追求する上で、妥協できない安全基準です。

もし血流障害が起きたら  早期発見と対応が重要

血流障害が疑われる場合、最も効果的なのは できるだけ早く対応すること。なかでも鍵となるのは、注入されたヒアルロン酸を溶かす酵素である ヒアルロニダーゼ による 溶解処置 です。

・遅くとも 24時間以内の投与 が推奨され、可能であれば 発症後できるだけ速やかに溶解することが推奨されます。

・その他、血流改善のために 血管拡張薬、抗凝固療法、高圧酸素療法、ステロイド等 を併用することで、組織損傷を最小限に抑えることが期待されます。

ただし、重要なのは “溶かせば元どおり” ではない点。壊死が進んでしまうと、たとえヒアルロニダーゼで血流を戻しても、 組織の回復は難しく、瘢痕や変形が残る可能性 が高いのです。

つまり、「少し変だな?」と感じた時点で すぐに受診・処置できる体制、そして 術後の自己観察(セルフチェック) は、すべての施術における必須条件だと私は考えます。

“安全な注入”のために、医師と患者が知っておくべきこと

では、リスクを可能な限り下げるために、私たち医師と患者ができること — “安全なヒアルロン酸治療” への心得をまとめます。

1.解剖学・血管走行を熟知すること

顔は複雑な血管ネットワーク。特に鼻根・鼻背、眉間、ほうれい線、頬などは動脈が密集しており、注意が必要です。

2.注入層・針の種類・圧に細心の注意を払うこと

鈍針(カニューレ)が安全とされることもありますが、万能ではありません。過度な注入圧や過剰量、深い層への注入はリスクを高めます。

3.施術後のセルフチェックと、異変があれば即受診できる体制

注入直後だけでなく、帰宅後 24~48時間は “自己観察タイム”。少しの違和感や皮膚の色変化も見逃さないようにしましょう。

4.施術者の経験と緊急対応の準備

血流障害はベテランでも起こす可能性があります。だからこそ、ヒアルロニダーゼやその他の救急対応が可能な体制を整えておくことが大切です。

5.患者さんとの “信頼と説明”

リスクを隠さず、事前にしっかり説明する。起こる可能性と、その対処法を共有すること — それこそが「患者ファースト」の医療だと私は信じています。

変化を楽しむために   でも、安心と安全が最優先

ヒアルロン酸は、顔に自然なハリや形の修正をもたらし、年齢とともに失われがちな“土台”をサポートする強力な味方です。私が「小顔カスタマイズ」や「左右差補正 0.01 mL 単位」のような繊細な技術を追求しているのも、“自然で美しい仕上がり”を理想としているからです。

しかし、その裏には“血流障害”というリスクがゼロではない現実がある。だからこそ、私はこれからも 安全な施術、丁寧なカウンセリング、術後の観察 を最優先にしていきたい — そして患者さんにも、ただ「綺麗になりたい」という希望とともに、“安心と安全”を手にしてほしいと思います。

もし、ヒアルロン酸注入を考えているなら――施術する医師に、ぜひ次の点を確認してください

・「この注入部位は血管の走行を十分に理解していますか?」
・「ヒアルロニダーゼによる溶解が可能な体制は整っていますか?」
・「施術後のリスクと対応について、明確に説明してくれますか?」

それが、あなたの「本来の美しさ」を守るための、大切な“安全への配慮”です。

まとめ

「ヒアルロン酸=安全」「手軽に若返り」というイメージは確かに強く、多くの患者さんがその恩恵を受けています。ですが、私たち医師側も、そして患者さん側も、「安全」への理解と意識を決して怠ってはなりません。

美容医療を通して「自然な美しさ」と「安心」を両立させるために — それが、私、しのぶ皮膚科の信念であり、使命です。

※ご参考までに下記のメニューをご覧ください。


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この記事の監修者

しのぶ皮膚科 院長 蘇原しのぶ Shinobu Sohara

2003年に東海大学医学部を卒業し、北里大学病院皮膚科、獨協大学医科大学附属病院皮膚科を経て、2016年にヒアルロン酸専門クリニック「しのぶ皮膚科」(港区三田)を開業。皮膚科・皮膚外科歴22年。

「ヒアルロン酸小顔カスタマイズ」と名付けたヒアルロン酸注入法で、他院では難しいと言われた患者さまの悩みを改善し、ボリュームアップだけではなく骨格形成、自然な若返り、たるみあげなどを、ヒアルロン酸単独で行う独自技術を持つ。自然な若々しさと美しさを追求したデザイン力に定評があり、日本全国のみならず海外からの患者様も多く、リピート率は90%以上。難病の患者さんの顔痩せや怪我の修復にヒアルロン酸注入による往診を行っている。

略歴

  • 平成15年3月東海大学医学部卒業
  • 平成15年4月北里大学皮膚科
  • 平成18年獨協大学病院皮膚科
  • 平成28年しのぶ皮膚科開業
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