近年、シワやたるみ、くぼみなどを改善する目的でヒアルロン酸注入が広く行われるようになりました。しかし、その一方で「チンダル現象」という思わぬトラブルに直面するケースも少なくありません。チンダル現象とは、ヒアルロン酸注入において特に目の下や薄い皮膚の部位で生じる青っぽい変色のことを指します。今回は、このチンダル現象のメカニズムから予防策、そして万が一起こった場合の対処方法まで、医師の観点から詳しく解説していきます。

チンダル現象とは?
チンダル現象は、光がコロイド粒子に当たることで散乱し、可視化される現象の総称です。ヒアルロン酸注入においては、注入したヒアルロン酸が皮膚表面に近い層に留まってしまい、そこに光が当たることで青っぽく見えてしまうのです。ヒアルロン酸自体は透明ですが、光の波長や皮膚の薄さ、ヒアルロン酸の性質によって結果的に青やグレーに見えてしまいます。
特に、目の下やこめかみ付近など、皮膚が薄い部位はチンダル現象が起こりやすいと言われています。また、時間が経つほど落ち着いていくケースもあれば、逆に数か月後に気づくケースもあり、一概に一定のタイミングで起こるわけではありません。
ユーザーが抱える代表的な不安や悩み
1.「青くなるのが目立ってしまうのでは?」
2.「いったん出現したら消えないのではないか?」
3.「修正するために余計な費用がかかるのでは?」
4.「そもそも失敗例が多いのでは?」
多くの方が、ヒアルロン酸での施術を検討する際に“自然な仕上がり”を期待します。そのため、チンダル現象によって不自然な青い膨らみが生じると、「やはり施術は危険なのでは?」という疑問や不安が高まってしまいます。実際には、正しい手技と注入箇所の選定、そして使用するヒアルロン酸製剤の選択をきちんと行えばリスクは軽減できます。

チンダル現象の主な原因
1.浅い層への注入
皮膚に近すぎる層にヒアルロン酸が入ると、光が散乱しやすく青っぽい色が見えやすくなります。特に目の下は皮膚が薄く、少量のヒアルロン酸でも影響を受けやすい部位です。
2.ヒアルロン酸の種類
粘度や分子構造の違うヒアルロン酸を誤って選んだ場合、皮膚表面にわずかでも“塊”のように留まってしまい、チンダル現象が起こりやすくなります。
3.施術者の技術不足
ヒアルロン酸注入は一見簡単な処置に思えますが、解剖学的知識や経験が乏しいと注入位置・深さ・量などが適切に調整できず、結果的にチンダル現象を引き起こしやすくなります。
4.術後のケア不足
まれではありますが、施術後に強く患部を押したりマッサージを繰り返したりすると、ヒアルロン酸の位置が変わってしまい、浅い層に浮き上がってくる可能性があります。
チンダル現象の予防策
1.適切なヒアルロン酸製剤の選択
部位ごとに最適な粘度・粒子サイズが異なります。例えば、目の下には粒子が細かく、比較的ソフトなヒアルロン酸製剤を用いた方が良い場合が多いです。
2.解剖学的知識に基づいた注入計画
目の下や頬などは血管や神経が密集しているため、施術者は骨格や筋肉の配置を考慮しながら、どの層に何ミリ程度注入するかを見極める必要があります。十分な医学的知識と経験がある医師に相談することが、チンダル現象だけでなく、血管閉塞などのリスクを回避するうえでも非常に重要です。
3.カニューレの使用
注射針ではなく先端が丸いカニューレを使用する方法もあります。カニューレは組織へのダメージを減らしながら、狙った深さへスムーズに薬剤を届けられるため、チンダル現象のリスクが軽減する可能性があります。
4.施術後の適切なケア
施術後は激しいマッサージや圧迫を避け、数日は強い刺激を与えないようにすることが推奨されます。ダウンタイムは個人差がありますが、患部の様子を観察しながらクリニックと連絡を取り合うと安心です。
もしチンダル現象が起こったら?
万が一、チンダル現象が出現してしまった場合でも、以下のような対処方法があります。
1.自然吸収を待つ
ヒアルロン酸は徐々に体内に吸収されるため、時間とともに青みが目立たなくなるケースもあります。ただし、一度起こったチンダル現象が完全に消えるかどうかは、注入層の深さや製剤の種類、個人差にも左右されます。
2.ヒアルロニダーゼによる溶解
チンダル現象が強く出てしまった場合、ヒアルロニダーゼという酵素製剤を注射してヒアルロン酸を分解・溶解できます。適切に使用すれば即座に形状をリセットできるため、施術直後だけでなく、数か月後や数年後でも対応可能です。
3.再注入による修正
チンダル現象が目立たない層に改めてヒアルロン酸を注入し、見た目のバランスを整える方法もあります。ただし、浅い層に残っている場合は、一度溶解してから再注入することが望ましいケースもあるため、医師の判断が重要です。

施術を検討する際の注意点
1.信頼できる医療機関を選ぶ
チンダル現象や血管閉塞など、ヒアルロン酸注入に伴うトラブルは医師の技量が大きく影響します。経験豊富な医師が在籍しているクリニックを選びましょう。
2.カウンセリングで不安を解消する
自分の希望や不安をしっかり伝え、チンダル現象のリスクや術後の経過・アフターケアについて詳しく説明を受けてください。不明点や疑問点があれば納得いくまで質問しましょう。
3.ヒアルロン酸の種類と持続期間を確認する
ヒアルロン酸によっては持続期間が異なり、硬さや粘度など特性にも違いがあります。自分に合った製剤を選ぶことが、仕上がりだけでなくチンダル現象対策にも重要です。
まとめ
ヒアルロン酸注入におけるチンダル現象は、皮膚の薄い部位に浅くヒアルロン酸が留まることで青っぽく見える現象です。原因としては浅い層への注入や、製剤の選び方、施術者の技術力などが挙げられます。しかし、適切な予防策を講じ、もしチンダル現象が起こってしまった場合でもヒアルロニダーゼなどの修正法が用意されているため、必要以上に恐れる必要はありません。
むしろ大切なのは、信頼できる医師のもとでカウンセリングを行い、ベストな注入計画と製剤を選択することです。目の下などのデリケートな部位ほど、その違いは大きく結果に表れます。施術を受ける際は、チンダル現象のリスクやその対処法についてもしっかりと理解したうえで、安心して治療を受けられる環境を整えることをおすすめします。