ふっくらとした涙袋は、目もとを若々しく魅力的に見せる要素の一つとして人気があります。そのため、ヒアルロン酸を注入して涙袋を形成する美容医療が注目を集めています。しかし同時に「皮膚が伸びてしまわないか」「将来的にたるみにつながらないか」という不安の声も少なくありません。実際のところ、ヒアルロン酸注入によって涙袋周りの皮膚が伸びる可能性はあるのか、また起こりうるリスクや対策法はどのようなものか。本記事では、医師の視点から詳しく解説していきます。

涙袋とヒアルロン酸注入の基本
涙袋とは、下まぶたの目のすぐ下にあるふくらみのことを指します。目もとの印象を左右するパーツであり、ぷっくりとした涙袋を作ることで目が大きく、優しい印象になると言われています。もともと涙袋のふくらみがあまり目立たない方でも、ヒアルロン酸注入によって下まぶたにボリュームを加えることで、自然な涙袋を形成することが可能です。
ヒアルロン酸注入は、体内にも存在する保湿成分であるヒアルロン酸を皮下に注入し、ボリュームアップやシワの改善をはかる施術です。ヒアルロン酸は種類や硬さのバリエーションが豊富であり、涙袋への注入では比較的やわらかいタイプを使用することが多いです。
なぜ「皮膚が伸びる」と心配されるのか?
ヒアルロン酸注入に対する不安の一つとして挙げられるのが「皮膚が伸びてしまうのではないか」という疑問です。涙袋周辺の皮膚は比較的薄く、他の部位に比べてデリケートな構造をしています。そのため、過度にヒアルロン酸を入れると、一時的に皮膚が押し広げられる感覚を伴うことがあります。こうした変化が長期的に皮膚を伸ばしてしまうイメージを与えるため、「将来たるんでしまうのでは」という懸念につながるのです。
実際に皮膚が伸びることはあるのか?
実際のところ、ヒアルロン酸注入によって大きく皮膚が伸びてしまうケースはまれです。ヒアルロン酸は時間とともに体内で徐々に分解・吸収される物質であり、半年から1年前後で効果が薄れていきます。よほど大量に注入するなど、不適切な施術を行わない限りは、皮膚自体が顕著に伸びてしまうリスクは低いといえます。
但し、体質や肌の状態によっては、繰り返し注入することで一時的に皮膚に負担がかかる場合も考えられます。たとえば極端に頻繁に施術を受けたり、過剰な量を注入し続けると、皮膚や組織が拡張されてしまう可能性がゼロとは言い切れません。また、加齢とともに皮膚の弾力は低下しますので、ヒアルロン酸の影響にかかわらず、たるみが生じやすくなる時期もあります。

リスクを抑える施術方法・医師の選び方
ヒアルロン酸注入によるリスクを最小限に抑えるためには、以下のポイントに注意して施術を受けることが大切です。
1.適切な注入量
自然な涙袋を形成するためには、少量ずつ注入しながら様子を見て調整する方法が望ましいです。初回から多量に注入してしまうと、見た目が不自然になるだけでなく、皮膚への負担が高まる可能性があります。
2.適切な層への注入
涙袋へのヒアルロン酸注入は、医師の技術と解剖学的な知識が求められる繊細な施術です。適切な層(主に眼輪筋下や眼輪筋内など)へ均一に注入しないと、ヒアルロン酸が偏ってしまい、デコボコやしこりができる原因となります。
3.ヒアルロン酸の種類選び
涙袋に注入するヒアルロン酸は、より柔らかく自然に広がるタイプが向いています。硬さや持続性に優れる製剤を使用したい場合でも、涙袋のデリケートな部位に適したものであるかどうか、事前に医師としっかり相談しましょう。
4.信頼できる医師の選択
実績のあるクリニックや、美容皮膚科・美容外科など専門分野に精通した医師を選ぶことは非常に重要です。カウンセリングでは疑問点を遠慮なく質問し、納得できる説明を得られるかどうかを見極めることが、後悔のない施術につながります。
アフターケアとメンテナンス
ヒアルロン酸注入後の仕上がりを美しく保ち、皮膚への負担を軽減するためには、適切なアフターケアも欠かせません。
注入後の腫れや内出血への対処
施術直後は腫れや内出血が起こることがあります。冷却パックを使用したり、処方された薬を使用するなどして、症状が長引かないようケアしましょう。
マッサージや強い刺激を控える
施術直後は、注入したヒアルロン酸が安定していない可能性があるため、過度なマッサージや強い力で触ることは避けてください。形が崩れる原因にもなりかねません。
定期的な経過観察
ヒアルロン酸の効果が落ち着くのは施術後2週間ほどが目安ですが、その後も定期的にクリニックで診察を受け、注入部位の状態をチェックしてもらいましょう。異常があれば早期に対処することでトラブルを未然に防ぐことができます。

上手にヒアルロン酸注入を受けるポイント
涙袋へのヒアルロン酸注入で美しい仕上がりを目指すには、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
1.過度な期待は禁物
注入後の変化には個人差があります。過度な量を求めると、不自然な見た目になったり、皮膚への負担が高まる原因になります。
2.適切な施術間隔
ヒアルロン酸の効果は永続的ではありません。効果が薄れてきたと感じても、焦って短いスパンで注入を繰り返すのは避け、医師と相談して適切なタイミングでメンテナンスを行うのが望ましいです。
3.自分の肌状態を把握する
加齢や生活習慣によって肌の状態は常に変化しています。乾燥が進んでいる場合や、もともと皮膚が薄い方は少量注入でも負担を感じるかもしれません。定期的に自分の肌状態をチェックし、不安があれば早めに医師へ相談しましょう。
まとめ
涙袋へのヒアルロン酸注入で「皮膚が伸びるのではないか」と心配する方は多いですが、適切な量と方法で施術を受ければ、過度に皮膚が伸びてしまうリスクは低いと考えられます。ただし、ヒアルロン酸は永遠に残るわけではなく、体質や施術回数によっては多少の影響が出る可能性もあります。とくに過剰な量の注入を繰り返すと、皮膚や周囲の組織に負担がかかる恐れがあることを覚えておきましょう。
最も大切なのは、自分の希望と顔のバランスを踏まえて少しずつ調整し、信頼できる医師と丁寧なカウンセリングを行うことです。また、アフターケアをしっかり行い、肌の状態や加齢による変化にも配慮しながらメンテナンスを続けることで、自然で美しい涙袋を長く保つことができるでしょう。
ヒアルロン酸注入はあくまで医療行為です。不安や疑問を抱えたまま施術を受けるのではなく、専門家に相談し、リスクとベネフィットをよく理解したうえで施術を検討してください。正しい知識を身につけたうえで適切なケアを行えば、魅力的な目もとを手に入れながら、余計なトラブルを避けることが可能です。