「結婚式までにシワを整えたいけれど、そろそろ赤ちゃんも欲しい」「妊活休職中にダウンタイムを確保できる今がチャンス?」――30〜40代の外来で最も多い相談のひとつがヒアルロン酸注入と妊娠計画の両立です。ヒアルロン酸は体内成分と同じだから安全と思われがちですが、妊娠判定前後のほんの数週間をどう過ごすかが将来のリスクを大きく左右します。今回は産婦人科医とも連携する美容皮膚科医の視点で「妊活中〜授乳期」の判断基準をまとめました。

そもそもヒアルロン酸はどこまで安全なのか?
● 人体由来成分でアレルギー頻度は極めて低い
● 製剤は架橋(硬め)と非架橋(柔らかめ)に大別
● 局所麻酔入り製剤・術後の鎮痛薬が胎児に与える影響は「完全には未解明」
妊娠中は原則NG、その医学的理由
● 胎児への薬理学的不確実性
※動物試験で明確な催奇形性は報告されていないが、製剤添付文書はいずれも「妊娠中の安全性は確立していない」と記載。
● ストレス・疼痛・局所麻酔による子宮収縮リスク
● ホルモン変化による浮腫で仕上がりが読めない
● 術後感染や血腫に対しX線・投薬が制限される
「安全でも不必要な医療行為は避けるのが原則」ということです。
妊活中(妊娠希望)のベストなタイミング戦略
● 排卵前2 〜 3週間:注入可否△・・・妊娠判定までに時間がある為
● 排卵期〜着床期:注入可否✖・・・「実は妊娠していた」ケースを完全に除外できない為
● 妊娠検査薬陰性直後:注入可否△・・・翌周期の妊活を一時中断する覚悟が必要な場合がある
妊活中でも現在妊娠の可能性がなければヒアルロン酸注射は可能です。慎重を要し、施術後3か月は避妊をお勧めします。

授乳期はどうする?
● 非授乳側乳房での豊胸注入は不可:乳腺炎リスクと母乳組成変化の懸念
● 顔への少量注入は48時間の断乳で許可するクリニックもある
● 断乳後1か月経過+生理再開がひとつの目安
注入済みのヒアルロン酸が授乳に影響した報告はありませんが、授乳中の新規注入は推奨しません。
産後にニーズ急増!ママダウンタイムのコツ
● 施術は授乳スケジュールに合わせて午後遅めに
● カニューレ注入で内出血を最小限に
● 抱っこ負荷の少ない部位(Tゾーン・唇)から開始
● 骨格変化(骨盤・フェイスライン)の落ち着く産後6か月以降がベスト
ヒアルロン酸以外の妊活フレンドリー美容
● しわ改善:代替法・レチノール0.1%クリーム
※注意点:夜のみ・妊娠判定後は中止
● 保湿&ツヤ:代替法・ヒト型セラミド配合洗顔→保湿
※注意点:アレルギー既往の確認
● 軽度タルミ:代替法・超音波美顔器(EMSなし)
※注意点:週2回まで、体調優先

よくある質問(FAQ)
Q1. 妊活を始めたばかり。今日注入して来月の採卵に影響は?
A. 採卵刺激で血栓リスクが上がるため、1周期見送りが無難です 。
Q2. 既に注入してあるヒアルロン酸は溶解すべき?
A. 妊娠自体への害は報告はありません。ヒアルロニダーゼ(溶解酵素)は局所吸収なので通常不要です。
Q3. 豊胸用に大量注入したら授乳に詰まりや痛みが出る?
A. 注入層が皮下脂肪内であれば乳腺への直接圧迫は少ないです。
Q4. 授乳が終わったらすぐ注入して良い?
A. 乳腺の張り戻りや体重変動が落ち着く産後3〜6か月を目安にした方が良いと思います。
Q5. 妊活中にどうしても小ジワが気になる場合の応急処置は?
A. 非架橋ヒアルロン酸のスネコスなどをお勧めします。施術可否はクリニックによると思いますので、確認しましょう。
まとめ―「先に妊娠、それから美容」が結局いちばん安全
● 妊娠中は原則ヒアルロン酸注入を控える
● 妊活中は“施術後2〜3周期の避妊”がリスク最小
● 授乳中は医師と断乳期間を事前にすり合わせる
● 出産後はホルモンと体形の安定を待ち、再評価してからデザインする
美しさと安全の両立には「ライフイベントに美容計画を合わせる」ことが欠かせません。妊活アプリの排卵日管理と同じように、美容施術もタイムラインを引いてみましょう。ご不安な点があれば、婦人科と連携できる専門の医師へぜひ一度ご相談ください。