せっかく入れたヒアルロン酸がなくなるのでは?という不安を解消するために、本稿では、医師の視点から最新エビデンスと臨床経験をもとに、ヒアルロン酸と熱エネルギー系施術(レーザー/HIFU/RF)を安全に組み合わせるポイントを網羅的に解説します。

ヒアルロン酸が「熱に弱い」という誤解
ヒアルロン酸自体は60 ℃前後で分解が促進されます。ただし、美容医療で用いるレーザーやHIFU、RFが その温度・深度で直接フィラーに作用することはまずありません。実際、国内外の文献検索でも「照射でヒアルロン酸が溶けた」という症例報告はされていません。
層が違うからほぼ溶けない
● ヒアルロン酸注入:主なターゲット層は真皮下~骨膜上
● レーザー(ピコ、IPLなど):主なターゲット層は表皮~浅層真皮
● RF(高周波):主なターゲット層は真皮~皮下浅層
● HIFU:主なターゲット層は皮下深層~SMAS
各エネルギーが作用する深さが異なるため、注入層にエネルギーが届きにくいのが実情です。熱エネルギーでフィラーが溶ける心配はありません。

それでも注意したい 例外
● 浅い層へのフィラー(涙袋・唇など):皮膚表面に近いため、強いCO₂フラクショナルやアブレイティブレーザー直後は分解スピードがやや早まる可能性があります。
● ダウンタイム中の照射:腫脹や内出血が残るうちは炎症を悪化させ、結果的に吸収を促進するリスクがあります。注入後2週間はレーザーを避けることをお勧めします。
ベストな施術順と間隔
1.エネルギー系施術 → ヒアルロン酸注入
熱を先に 当てることで、後から入れたフィラーを長持ちさせやすいです。
2.どうしても同日に行うなら
レーザー/HIFUを先、注入を後 に行い、部位をアイスパックで十分に鎮静してから注入をお勧めします。
3.推奨インターバルの目安
・RF:1–2 週間
・HIFU:2–4 週間
・アブレイティブレーザー:4–6 週間
ヒアルロン酸を長持ちさせるセルフケア
● 72時間は強いマッサージ・圧迫は避けましょう— 移動や変形を防ぎます。
● 高温環境(サウナ・長風呂・激しい運動)は1週間控えましょう— 体温上昇が分解を促進させます。
● 紫外線対策と十分な保湿 — コラーゲン破壊を抑え、フィラー周囲の環境を整えます。
本当に溶かしたいときはヒアルロニダーゼ
レーザーではなく、ヒアルロニダーゼという酵素でのみ意図的な溶解が可能です。ただし、アレルギー反応などのリスクがあり、経験豊富な医師による慎重な注入が必須です。

まとめ
● レーザー・HIFU・RFでヒアルロン酸が溶けるエビデンスは現状ほぼない。
● ただし 浅層注入直後の強い熱照射や、ダウンタイム未回復の皮膚 では吸収が早まる可能性がある。
● 安全かつ効果的に併用するコツ は「エネルギー施術を先に」「適切なインターバルを守る」「術後ケアを徹底」。
● 修正が必要な場合は ヒアルロニダーゼ による分解を検討する。
これらを押さえれば、ヒアルロン酸とレーザー・HIFU・RFを組み合わせた総合エイジングケアでも、仕上がりと持続の両立が十分に可能です。施術計画に迷った際は、各施術に精通したクリニックで個別に相談してください。溶ける不安を解消しつつ、理想のフェイスラインと肌質を手に入れましょう。