マリオネットライン治療で“失敗”しないために  ヒアルロン酸注入のリアルと注意すべき落とし穴

「口の両脇からあごに向かって伸びる深い溝 — マリオネットライン」は、多くの方にとって「老け見え」「不機嫌そう」「疲れているように見られる」という印象を与えてしまう悩みのひとつ。多くの美容クリニックではその解消手段としてヒアルロン酸注入が提案されます。実際、注入直後に「溝が浅くなった」「顔が重く見えない」「表情が明るくなった」という声も多く、魅力的な選択肢です。

しかし、一方で「思った通りにならなかった」「しこり・凹凸・左右差」「不自然に膨らんだ」「触ると硬い」「数ヶ月で元に戻った」など、“失敗”と感じる結果を経験する人も少なくありません。

私は美容医療を「自然でバランスのよい仕上がり」「患者さんが安心できる治療」「長く付き合えるフェイスデザイン」と捉えています。だからこそ、マリオネットラインへのヒアルロン酸治療を考えるなら、「効果だけ」「見た目の若返り」だけでなく、「リスク」「適応」「術後経過」「メンテナンス」を含めた慎重な判断が必要だと感じています。本稿では、マリオネットラインのヒアルロン酸注入で起こりうる“失敗の現実”、そしてそれを避けるために知っておきたいことを、ヒアルロン酸専門医の立場から解説します。

マリオネットラインとは — なぜ気になるのか?

「ほうれい線」と似ているため混同されがちですが、マリオネットラインは以下のように定義されます。口角の両端から顎に向かって縦に伸びる溝(ライン)。

・無表情でも目立ちやすく、口元が下がって見えることで “不機嫌そう/老けた印象” を与えやすい。

・加齢や皮膚のたるみ、皮下脂肪の減少、筋肉の下垂、コラーゲン・エラスチンの減少、生活習慣など、複数の要因が絡んで現れる。

多くの患者さんの悩みは、「写真写りが暗く見える」「マスクを外したときに老けた印象になる」「若いころの口元のハリを取り戻したい」「でもメス手術は怖い/避けたい」というものです。

そのような人々にとって、ヒアルロン酸注入は “手軽で切らずにできる若返り法” として魅力的に映ります。

ヒアルロン酸注入で得られる効果 — 期待できること

ヒアルロン酸注入によるマリオネットライン治療のメリットは、以下の通りです。多くのクリニックがこの効果を前提に施術を勧めています。

溝(ライン)を埋めて“凹凸”をなくす — ヒアルロン酸を注入することで、溝が内側からふくらみ、マリオネットラインが目立たなくなる。

口元の下がり/たるみ感の改善、若々しい印象の回復 — 溝が浅くなることで、口角が下がって見える印象や、重たく疲れた印象が和らぐ。

切らずに/短時間でできる治療 — メスや大きな手術を伴わず、比較的短時間で施術が完了し、ダウンタイムも軽めのケースが多い。

比較的安全性が高い素材 — ヒアルロン酸は元来身体にある成分で、アレルギーリスクが低め、かつ体内に吸収される性質を持つ点がメリット。

こうした利点から、「大きな変化を望まず、自然に若返りたい」「まずは手軽に試してみたい」という層にとって、ヒアルロン酸は非常に有力な選択肢となります。

でも、“失敗”はゼロではない — よくあるトラブルと原因

しかしながら、マリオネットラインへのヒアルロン酸注入において「失敗だった」「後悔している」と感じる患者さんが一定数いるのも事実。代表的な失敗/トラブルは以下の通りです。

よくある失敗・トラブル

注入部位がボコボコ/凸凹、しこりが残る
浅い層に硬めのヒアルロン酸を入れてしまったり、注入量が多すぎたりすると、皮膚の表面に凹凸が出やすく、「触るとゴツゴツ」「見た目が不自然」ということが起きます。

不自然に膨らみすぎる/顔全体が膨張した印象になる
 一度に大きな変化を求めて過剰に注入すると、顔全体のバランスが崩れ、「ヒアルロン酸入れた顔」になりやすい。特に口元〜顎にかけての膨らみは、不自然さを強調します。

左右の非対称やバランスの崩れ
 注入量や注入深度、注入層が左右で揃っていないと、左右差が目立つことがあります。ヒアルロン酸注入では、もともと顔の非対称性があると、それが拡大されるリスクもあります。

効果の持続が短い/すぐ元に戻ったように感じる
柔らかすぎる製剤や注入量が少なすぎた場合、体に吸収されるのが早く、数ヶ月で効果が薄れてしまうことも報告されています。

内出血・腫れ・痛み・赤みなどの副作用
一般的な注射のリスクとして、施術直後から数日間は赤みや腫れ、内出血が起きる可能性があります。重篤な合併症は極めて稀ですが、ゼロではありません。

 “なぜ失敗するのか?” 主な原因

医師の技術・経験不足
ヒアルロン酸注入はただ「入れればいい」というものではなく、注入層、量、製剤の選定、注入速度・方向、量の調整など、繊細な技術が求められます。技量が不足していると、しこり・左右差・膨らみすぎ・凹凸などが起きやすくなります。

過度な変化を求めすぎる/短期間に繰り返す
一度に大きな変化を望む、あるいは短期間で何度も注入を繰り返すと、組織への負担が大きくなり、しこりや不自然さ、長期的なバランス崩れにつながることがあります。

皮膚・組織の状態・年齢・たるみの度合いを正しく評価せず安易に入れた
 マリオネットラインの原因が皮膚たるみ、脂肪の下垂、筋肉・靭帯の緩みなど複数要因であるにもかかわらず、「とりあえずヒアルロン酸で溝を埋める」という安易な判断が、満足度低下や失敗につながることがあります。

質の低いヒアルロン酸や不適切な製剤選択
 柔らかすぎたり、馴染みにくい、硬すぎる、持続性が低いなど、不適切なフィラーを使うことで、不自然さや早期の劣化が起きる可能性があります。

“わたし流” — 失敗を防ぐための考え方とチェックポイント

私がマリオネットラインへのヒアルロン酸注入を行うなら、以下のような観点でプラン設計・施術・フォローを行います。

カウンセリングで「期待値」と「限界」を明確にする

多くの患者さんは「若返り」「明るい印象」を求めていますが、「溝を浅くする=自然に若々しく」は、あくまで“条件付き”です。皮膚のたるみ、靭帯・筋肉の緩み、骨格、表情の癖、生活習慣などを含めて総合的に見て、「ヒアルロン酸で本当に改善できるのか」を一緒に判断します。

また、過度な期待(「10年前の顔に戻りたい」「ずっと維持したい」など)には現実的な返答を行い、必要に応じて他治療(リフト、皮膚のたるみ治療、皮膚再生、脂肪注入など)を提案する可能性も説明します。

 “量より質/少なめ・ゆっくり” のフィロソフィー

過剰注入や “一度にたくさん入れる” 施術は避け、まずは最小量から始めて経過をみる。必要であれば数か月後に少しずつ追加する。これにより、不自然な膨らみ、しこり、左右差、凸凹などのリスクを減らせます。

また、使用するヒアルロン酸の種類(硬さ、粘弾性、馴染みやすさ、持続性)を慎重に選び、マリオネットラインという “動きがあり、表情にも関係する部位” の特性を考慮した最適な製剤を選定します。

フォローとメンテナンスを前提にする

ヒアルロン酸注入は「永久固定」ではありません。時間の経過とともに吸収され、元に戻る可能性があります。だからこそ、注入後の経過観察、定期チェック、必要に応じた追加注入や別治療の検討など、長期視点でのプランニングを重視します。

また、万が一「不自然」「しこり」「凸凹」などのトラブルが起きた場合に備えて、ヒアルロン酸溶解(必要な場合)、修正、他治療への切り替えも含めたオプションの準備を整えておきます。

「この人には向かない/他の治療が望ましい」と判断する勇気

特に、皮膚のたるみが強い、筋肉や靭帯の緩みがある、過去に何度も注入を受けている、しこりや硬さのある人、顔のバランスが崩れている人――こうした場合には、ヒアルロン酸単独では理想の仕上がりに近づけない可能性があります。その場合は、他の治療(リフト、皮膚の引き締め、脂肪注入など)を提案することも重要です。

患者さんへのアドバイス — クリニック選びと施術前チェックリスト

もしあなたが「マリオネットラインの改善」を考えているなら、以下のようなポイントをよくチェックしてください。これは、私が患者さんに事前に確認してほしい “最低限の安全・仕上がりチェックリスト” です。

・医師は 顔の構造/皮膚のたるみ/筋肉・脂肪・骨格 を総合的に診断し、「なぜマリオネットラインができているか」の原因を説明してくれるか?

・ヒアルロン酸の 種類(硬さ・粘弾性・持続性)、注入量、注入層、注入方法(針かカニューレか)、注入スピードなどを明確に提示してくれるか?

・一度に大きな変化を求めず、少量ずつ・経過を見ながら仕上げる方針か?

・施術後の フォロー体制(アフターケア、メンテナンス、修正対応、溶解オプションの有無など)が整っているか?

・もし “たるみが強い/筋膜・靭帯の問題/過去注入歴あり” などの条件があれば、ヒアルロン酸以外の選択肢(リフト、皮膚再生、脂肪注入など)も提案してくれるか?

これらをきちんとクリアするクリニックなら、ヒアルロン酸注入は有効かつ安全な選択肢となり得ます。

終わりに — 「自然な若返り」と「慎重な判断」を両立させて

マリオネットラインのヒアルロン酸注入は、多くの方にとって「切らずに、比較的手軽に、若々しい印象を取り戻す」有力な手段です。しかし、その反面、「安易」「過剰」「適応を誤る」「技術・経験不足」といった理由で、“ヒアルロン酸顔” や “不自然な仕上がり” に陥る危険性もあります。

私は、ヒアルロン酸専門クリニックの院長として、患者さんに単なる「若返り」ではなく、「自然な美しさ」「バランスの良さ」「長く付き合えるフェイスデザイン」を届けたいと考えています。そのためには、「施術する医師の選択」「治療の計画」「注入の技術」「フォロー体制」――すべてを慎重に整える必要があります。

もし、マリオネットラインが気になって、「ヒアルロン酸でどうにかしたい」「若々しい口元に戻りたい」と思っているなら――ぜひ、一度 “本気のカウンセリング” を受けてください。そして、効果だけでなく「安全性」「将来性」「自然さ」を一緒に考えてみませんか?

それが、「あなたらしい美しさ」を守る — 本当の意味での “美容医療” だと、私は信じています。

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この記事の監修者

しのぶ皮膚科 院長 蘇原しのぶ Shinobu Sohara

2003年に東海大学医学部を卒業し、北里大学病院皮膚科、獨協大学医科大学附属病院皮膚科を経て、2016年にヒアルロン酸専門クリニック「しのぶ皮膚科」(港区三田)を開業。皮膚科・皮膚外科歴22年。

「ヒアルロン酸小顔カスタマイズ」と名付けたヒアルロン酸注入法で、他院では難しいと言われた患者さまの悩みを改善し、ボリュームアップだけではなく骨格形成、自然な若返り、たるみあげなどを、ヒアルロン酸単独で行う独自技術を持つ。自然な若々しさと美しさを追求したデザイン力に定評があり、日本全国のみならず海外からの患者様も多く、リピート率は90%以上。難病の患者さんの顔痩せや怪我の修復にヒアルロン酸注入による往診を行っている。

略歴

  • 平成15年3月東海大学医学部卒業
  • 平成15年4月北里大学皮膚科
  • 平成18年獨協大学病院皮膚科
  • 平成28年しのぶ皮膚科開業
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